前立腺とEDが関係する理由は?
下部尿路症状や前立腺肥大症はEDの危険因子です。前立腺の健康が勃起には欠かせません。
馬並師匠
さる
下部尿路症状や前立腺肥大症はEDの危険因子
前立腺とEDには関係があります。下記の記事でPC筋について書きましたが、まず前立腺の場所について画像で見てみましょう。
前立腺はまさに、ペニスの根元の部分にあり、極めて生殖機能と密接に繋がっていることがわかりますね。そして下記の記事にも書きましたが、
『男性機能の「真実」』にはこうあります。
EDとおしっこの意外な関係
(省略)実はこれも骨盤の血管の動脈硬化に関係があります。勃起させる動脈も膀胱や前立腺に栄養を運ぶ動脈も、内腸骨動脈という重要な動脈からわかれています。つまり、動脈硬化が進むと、EDになり、さらに膀胱も障害されておしっこが蓄められなくなったり、出にくくなったり、前立腺肥大症になったりるすわけです。
このような理由で、下部尿路症状や前立腺肥大症はEDの危険因子であると断言されています。おしっこがままらない男性はEDになりやすく、逆にEDの男性はおしっこに困る。
『下部尿路症状や前立腺肥大症はEDの危険因子である』と出てきました。動脈硬化が進むとEDになり、下部尿路症状や前立腺肥大症になるということなんですね。
また本にはこうもあります。
前立腺は射精装置
前立腺肥大症や前立腺がんという病名を聞いたことがあると思います。50歳を超えた男性を悩ませる病気で、おしっこが出にくくなるとか、尿の回数が増えるとか、なぜ前立腺なかあるのだろうと考えてしまう方も少なくありません。また、前立腺がんも急速な勢いで増えています。2016年には男性が罹患するがんのトップになりました【国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターHP】。
一見厄介に見えるこの臓器ですが、前立腺は射精装置なのです。人生の前半では生命の伝承とその維持に大半を費やします。射精はその生命の根源であるDNA情報が詰まった精子を体外に射出するという貴い行為です。そのために必要な臓器の一つが前立腺です。
前立腺は、
- 下部尿路症状
- 前立腺肥大
- 前立腺がん
といった問題を作る場所でもあり、一見すると厄介な部位なのですが、『射精装置』としての役割を果たしている、重要な器官なんですね。
馬並師匠
さる
- 前立腺はペニスの根元の部分にあり、極めて生殖機能と密接に繋がっている。
- 動脈硬化が進むと、EDになり、前立腺肥大症になったりする。
- 前立腺は『射精装置』。
前立腺とペニスは極めて密接に関係している
睾丸(金玉)の中にある『精巣』で精子が作られ、それが『精管』と呼ばれる、睾丸とその他を繋ぐ管から運ばれ、それが『射精管』に運ばれます。性的興奮が高まると、『前立腺液』が『前立腺部尿道』に分泌され、そこの圧が高まり、射精に至ります。
- STEP.1精巣で精子をつくる
- STEP.2精管から射精管に運ばれる
- STEP.3性的興奮が高まると前立腺液が前立腺部尿道に分泌
- STEP.4そこの圧が高まって射精に至る
つまり前立腺は、射精を考えるとき、睾丸と陰茎のちょうど中間地点にある部位。一度前立腺を通って射精されるというイメージで間違いないんです。
そう考えると、前立腺とペニスは極めて密接に関係しているということがわかりますね。そして先ほども言ったように、動脈硬化などの血管障害が起きると、前立腺肥大症や下部尿路症状などとともに、EDにもなってしまうということなのです。
また、下部に『EDの危険因子とその発症機序や要因』を掲載します。
加齢 | 陰茎海綿体血管内皮障害、テストステロン低下 |
---|---|
喫煙 | 陰茎海綿体動脈の閉塞、血管障害 |
高血圧 | 血管内皮障害、血管障害 |
糖尿病 | 自律神経障害、血管内皮障害 |
高脂血症 | 陰茎深動脈アテローム性動脈硬化 |
肥満と運動不足 | テストステロン低下、動脈硬化 |
うつ症状 | 心因性要因 |
下部尿路症状/前立腺肥大症 | 交感神経過活動、骨盤内動脈虚血、NOS/NOの低下 |
慢性腎臓病 | 血流障害、神経障害、ホルモン異常、貧血など |
睡眠時無呼吸症候群 | 夜間酸素飽和度低下による陰茎海綿体障害 |
神経疾患 | 中枢、末梢神経障害 |
不妊症 | 心因性要因 |
薬剤 | 降圧剤、精神神経用薬、ホルモン剤など |
※出典『男性機能の「真実」』(ブックマン社)
前立腺肥大症や下部尿路症状によって、
- 交感神経過活動
- 骨盤内動脈虚血
- NOS/NOの低下
が起き、それがEDに繋がるとありますね。
交感神経の過活動
まず交感神経の過活動ですが、勃起の仕組みを見てみましょう。
- STEP.1エッチな刺激
- STEP.2副交感神経興奮
- STEP.3NO(一酸化窒素)放出
- STEP.4cGMP増加
- STEP.5陰茎海綿体平滑筋弛緩
- STEP.6動脈血大量流入
- STEP.7勃起
という流れが勃起の仕組みなのです。
- 交感神経が優位=緊張、不安
- 副交感神経が優位=リラックス
ですから、交感神経が過活動を起こせば、勃起の条件が整いません。
骨盤内動脈虚血
次に骨盤内動脈虚血ですが、 『骨盤』というのは先ほども載せた写真で、
- 尾てい骨
- 恥骨
というものが出てきましたが、この腰回りの一体の骨の総称をいいます。この骨盤内の動脈が虚血する。虚血というのは次のような意味ですから、
血液供給が不足してしまうということで、先ほどの勃起の仕組み、
- STEP.1エッチな刺激
- STEP.2副交感神経興奮
- STEP.3NO(一酸化窒素)放出
- STEP.4cGMP増加
- STEP.5陰茎海綿体平滑筋弛緩
- STEP.6※動脈血大量流入
- STEP.7勃起
この※の部分に問題が生じるわけです。こうなると、動脈硬化で血流不全になりEDになるのと同じように、EDになってしまうということですね。
骨盤内動脈虚血
そしてNOS/NOの低下ですが、もう一度勃起の仕組みを見てみましょう。
- STEP.1エッチな刺激
- STEP.2副交感神経興奮
- STEP.3※NO(一酸化窒素)放出
- STEP.4cGMP増加
- STEP.5陰茎海綿体平滑筋弛緩
- STEP.6動脈血大量流入
- STEP.7勃起
※の部分ですね。前立腺肥大症や下部尿路症状によって、NO、NOSが低下すると、
勃起の条件が整わないので、EDとなってしまうわけです。
馬並師匠
さる
- 前立腺とペニスは極めて密接に関係している。
前立腺がんとED
それほどEDと密接に関係している前立腺ですから、『前立腺がん』の問題を考えたときも、EDの問題を同時に考える機会が増えます。前立腺がんを手術すると、
- 前立腺
- 精嚢
を切除します。精液はこの2つの部位によって作られるので、それを切除すると 精液は出ませんが、絶頂時にはオルガズムを感じることができます。
ただし、『男性機能の「真実」』にはこうあります。
前立腺がんホルモン療法でEDになったら
前立腺がんは男性ホルモンと関係があり、進行性前立腺がんには男性ホルモン除去療法を行います。男性ホルモンを下げる薬を使って、がんの進行を止めます。当然、男性ホルモン濃度が下がるので、いろいろな副作用が起きます。大きな副作用の一つは性機能の低下です。
ED診療ガイドラインによれば、男性ホルモン除去をする療法をする前と後では、性的興味維持率が70%から40%へ、性的活動維持率が50%から20%へ下がります。そしてEDの発症率は70~90%といわれています。
前立腺がんに罹ると、前立腺と精嚢を切除することによって精液が出なくなります。しかも男性ホルモン除去療法をしますので、性的欲求も下がってしまうのです。そしてEDになるということなんですね。
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターの2016年調べでは、男性が罹患するがんのトップとなった前立腺がんですが、放っておいて死に至ることがあれば、EDどころじゃありませんからね。がんが治療できただけでも良しとする必要があるでしょう。
国立がん研究センターHPにはこうあります。
参考 前立腺がん 基礎知識国立がん研究センター がん情報サービス前立腺がんとは
前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。早期に発見すれば治癒することが可能です。また、多くの場合比較的ゆっくり進行します。
前立腺がんは早めに治療すれば治すことができます。普段から人間ドックへ行って検診することの重要性を知っているのは、早期発見できた人だけかもしれませんが、後悔する人生を送りたくないなら、人間ドックへ行きましょう。
HPにはこう続きます。
発生要因
前立腺がんのリスクを高める要因として、前立腺がんの家族歴、高年齢が明らかにされています。その他にも肥満、食品(カルシウムの過剰摂取など)、喫煙などについて多くの研究が行われていますが、まだ明らかではありません。
前立腺がんの原因は、
- 前立腺がんの家族歴
- 高年齢
- 肥満
- カルシウムの過剰摂取
- 喫煙
等が挙げられていますが、最後の3つは自分の意思でコントロールできますからね。肥満や喫煙はそれだけでEDの原因ともなりますから、日頃から生活習慣を正し、あらゆる問題を未然に防ぐことの重要さを再確認したいですね。
また、前立腺肥大症と前立腺がんの症状はどれも似ています。『下部尿路症状』ですね。
- 尿が出にくい
- 尿の切れが悪い
- 排尿後すっきりしない
- 夜間にトイレに立つ回数が多い
- 我慢ができずに尿を漏らしてしまう
単なる頻尿、あるいは前立腺肥大症だと思ったら、前立腺がんだった。そういうこともありえますから、EDや下部尿路症状が出たら、真剣に下半身の病気を疑った方がいいかもしれません。
馬並師匠
さる
- 前立腺がんホルモン療法でEDになる可能性が高くなる。
- だが、がんが治療できただけでも良しとする必要がある。