EDが離婚理由になる?
はい。過去の判例でそのようなことが認められた事実があります。
判例というのは、一度出たらもう次も『同じようなケースはすべて同じ判決が下される』と考えるべきものです。したがって、過去にそういう判例があることは、とても大きな事実なのです。
馬並師匠
さる
ED→FSD→熟年離婚
下記の記事に書いたように、高齢者は老化が進んでいますから、それが原因でEDとなり、そしてFSD(女性版ED)を生み出し、熟年離婚ということもあります。
しかしもちろんそれは人それぞれです。セックスができないからという理由で離婚することはないと考える人も多いでしょう。特にテーマがその『熟年離婚』ということだったらますますそうですね。
熟年ということは熟しているということです。新婚ならともかく、せっかく二人で、そして家族でともに時間を過ごしてきて完熟に近づいてきたというのに、そんなことを理由にして離婚するなんてありえない。そう考える人が多いでしょうね。
考え方が成熟していれば、人がいつか必ず死ぬことはわかっています。そしてそれは急死ではなく、徐々に老化して死んでいくのです。その途中で顔にシワやシミができたり、骨や筋肉が衰えたり、免疫力が弱まって様々な病気に罹るリスクも増える。そういうことは、子供じゃない限りわかっていることです。
『ED 検査・診断・バイアグラによる治療の実際』(保険同人社)にはこうあります。
実際にはある程度の年齢になると、女性はもう勃起や挿入はどうでもよくて、手を繋いだで寝たり、抱き合ったりするだけで満足、ということもあるようです。そうした場合には、勃起だけを重要視する必要はないと思います。
従って、特に熟年者になるとEDという理由だけで離婚する、という人はめったにいないでしょう。
馬並師匠
さる
- 熟年者になるとEDという理由だけで離婚する、という人はめったにいない。
新婚と性欲が強い女性
しかし、新婚だったり、性欲が強い女性が相手であればもちろん話は別です。世の中にはたくさんの人がいて、その人の数だけ考え方がありますから、ケースバイケースとしか言えませんね。
『パンツの中の健康』にはこうあります。
<ジェニファー・ロペスのような女が増えたら大変だ>
(省略)Q.ハリウッドのジェニファー・ロペスという女優は、ベン・アフレックと『週に最低4回の性交渉』という婚前契約書を交わしたそうです。すぐに婚約解消になりましたが。
A.恐ろしいことですなあ(笑)。そんなふうに欧米の男性にとってEDは大問題なのです。一方、日本では、つい最近までは性交渉の減少が中年夫婦の間で深刻に受け止められることはありませんでした。旦那がしたくないのなら奥さんはあきらめる。というような状況だったと思います。
そのため、旦那さんも『もうそろそろ元気がないなあ』と思いつつも、深刻には悩まなかったのだと思います。しかし、日本は確実に欧米の後追いをしています。女性も強くなってきましたら、これまでのようなわけには行かないでしょう。
ジェニファー・ロペスの場合は離婚でしょうね。男性がEDになることは考えられない。そういう風に考える女性もいるのです。恐らく彼女は、『恋愛やSEXによって女性ホルモンが活性化される』と考えているのかもしれません。
参考 えっ?マジで!?「恋愛をすると女性ホルモンが増える」は嘘だった!CanCam.jp(キャンキャン)
にはこうあります。
恋愛をしても女性ホルモンは出ません!信じている人が多いようですが、恋愛やセックスをしても女性ホルモンが出るわけではありません。同じように、恋愛やセックスをしていないからと言って、女性ホルモンが減ることもないので、安心してください。
恋愛の有無にかかわらず、女性ホルモンは卵巣から淡々と分泌されます。ですが、雑誌やインターネットではそういった内容を目にすることが多くみられます。恋愛と女性ホルモンの関係について医学的に根拠はありません。
女性ホルモンは、多い方がいいわけでもないのです。きちんと決まった時期に必要な分だけ分泌されることが1 番です。そのためには健康的な生活を送ることを心がけましょう。(産婦人科専門医 宋美玄先生)
実際には8割以上の女性が恋愛やSEXで女性ホルモンが活性化され、若々しくいられると思っているようですがそれは違うようですね。
下記の記事に書いたように、恋愛やSEXで放出されるのは女性ホルモンではなく、ドーパミンです。
このドーパミンが放出されると、人は快楽に包まれます。
- 美味しい食事を食べる
- おしゃべりをする
- 仕事を達成する
- 迷路をクリアする
- タバコを吸う
- アルコールを飲む
- 麻薬をやる
- セックスをする
このような行為によって人は脳内に報酬系物質であるドーパミンを放出し、快楽を感じるようになっています。ですから、ジェニファー・ロペスを『良く』言えば、彼女は常に若々しく、美しくいたいがために、セックスをしたがっている。女性ホルモンが活性化すれば、常に女性は若々しくいられます。
女性ホルモンのエストロゲンは『最強の抗酸化物質』と言われていますから、シミやほくろ、肌の張り等を含めた様々な老化現象から身を守り、いつまでも若々しくいられるのです。
しかし『悪く』言えば、『快楽主義者』ですね。何しろ、セックスをして放出されるのはエストロゲンではなく、ドーパミンなのですから。つまりセックス中毒に近い人は、それだけ『ドーパミン中毒』でもあり、そういう人は実際には、セックス以外の方法でもドーパミンを求めがちです。
馬並師匠
さる
- ジェニファー・ロペスのような女が増えたら大変だ。
- 恋愛やセックスをしても女性ホルモンが出るわけではない。
ドーパミンの強い依存性
人間はドーパミンが大好きですからね。そしてそれは人間だけではありません。下記の記事に書いたように、
『脳と心のしくみ』によれば、ネズミで実験すれば、死ぬまで永久に『押すとドーパミンが出るボタン』を押し続けます。とても強い依存性があるのがこのドーパミンなのです。
- STEP.1押すとドーパミンが出るボタンを設置
- STEP.2ネズミがそれを押す
- STEP.3死ぬまで押し続ける
依存している人、中毒になっている人は、それ以外のものに目を向けられなくなりますからね。アルコール中毒や麻薬中毒の人は、それを手に入れるために泥棒をしたり、ときには人を殺すこともあります。
例えば、ニコラス・ケイジ主演の『グランド・ジョー』という映画でもそういうシーンを見ることができます。アルコール中毒の妻子持ちの男性が、人生の何もかもがうまくいかずに開き直り、更にひどいアルコール中毒へと堕ちていき、最後の方にはついに人の酒欲しさに人を殺してしまいます。
ジェニファー・ロペスをそういう人間と一緒くたにするわけではありません。彼女の歌は好きです。しかし、『セックスで出るのがエストロゲンではなくドーパミンである』という事実を見たとき、私はそのセックス依存に見える行為が、ある種の『麻薬中毒』と同じ類だと見えてしまうことがあります。
馬並師匠
さる
- ドーパミンには強い依存性がある。
日本人の気質は恥か誇りか
先ほど、欧米人と日本人の違いが出ていましたが、私は別に、その違いをそこまで悲観視していません。確かに以下の記事に、日本人の平均的な性交渉の回数は年間48回で、これは調査を実施した26か国中最低の数字だったことを書きました。
しかしその『奥ゆかしさ』というのは、場面変われば『誇り』となります。東日本大震災の時、あれだけの被害があったというのに、ほとんど火事場泥棒や強姦というような二次被害がなかった。世界中の人はそれを見て、
なんて誇り高き民族なんだ。
と絶賛しました。自分たちの国だったら、必ずそういう二次災害が起きる。この事実を考えたとき、日本のその気質というのは、本当に世界から見て劣っているのかどうか、首をかしげることになります。日本は世界トップクラスの『長寿大国』でもあるんですからね。
そのような『世界に誇る特性』を持っているにも関わらず、ただセックスの回数が少ないという断片的な理由一つで、日本人の特性や気質そのものを否定するのはどうでしょうか。
もちろん、『新婚ED』という言葉があるくらいですから、若い夫婦にはこの話は難しいでしょう。若くして精神をその境地まで熟達させ、あるいは湧き上がる性衝動を抑えることができる人も少ない。
しかし、夫婦になってある程度の年月が過ぎ、お互いに『会話』を重ねてきた者同士であれば、EDになり、セックスができなくなったという理由で離婚するというのは、首をかしげざるを得ません。もしかしたらそういう夫婦は、ただ『会話』をしてこなかっただけなのかもしれませんね。
馬並師匠
さる
- 熟年で離婚する夫婦はただ『会話』をしてこなかっただけ。
EDが離婚理由として認められた
しかし念のため、EDが離婚理由になるのかどうかを法律的な視点で考えてみましょう。民法770条1項にはこうあります。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
- 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
- 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
考えられるとしたら、5番目です。そして、 京都地裁の昭和62年5月12日の判決にこういうものがあります。
「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑(かんが)みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたり性交渉のないことは、原則として、婚姻を継続し難い重大な事由にあたる」
判例というものは、水戸黄門の印籠のようなものですからね。過去にこのような判例がある限り、セックスレスによって離婚をすることは認められているのです。しかし、よく見てみればわかるように、
病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り
とありますよね。つまり言ったように、お互いが加齢によって『もう性関係を重視しない』と考えていれば問題はないのです。
ニーチェは言いました。
新婚さんも、老夫婦も、『会話』をするのが結婚生活だということを忘れないようにしたいですね。愛があれば必ず問題は、乗り越えられます。
馬並師匠
さる
- EDで長年にわたり性交渉のないことが離婚理由として認められた。